1069人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
「…お前らね…。何やってんの」
春山先生が、呆れ果ててわたしたちの顔を見渡す。
「いいじゃん、先生」
マリが口をとがらせながら抗議した。
「先生に会えるのも、あと少しなんだもん。
写真くらい、撮らせてよ、ケチ」
無邪気なその言葉に、ひりひりと胸が痛む。
卒業まで、あと3カ月。
その間には、冬休みだってあるし、…3学期の途中からは、自由登校になってしまうので、先生と過ごせるのも、本当にあと少しの期間だけだ。
マリの携帯が、チャララン、という電子音を響かせる。
「おま、やめろって。どうせアルバムに載るんだから、いらないだろ」
「何言ってんの、私達は先生のその恥ずかしがる顔に萌えてるんじゃんっ」
「別に恥ずかしがってない」
「ほらあ、そーゆーとこっ」
マリは再び携帯のシャッター音を鳴らした。
こういう何気ない時間を、カメラで切り取ることが出来ればいいのに。
わたしは携帯を構え直し、仏調面に変わってしまった先生の顔を、パシャ、と写真に収めた。
最初のコメントを投稿しよう!