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……おっかしいなあ。
わたしは病室に掲げられた名札たちとにらめっこをしていた。
…月子ちゃんの部屋、…確か、階段のすぐ傍のこの病室だったはずなんだけど…。
首を傾げ傾げ、困った顔で階段を降りようとすると、下から来た看護師さんと目が合った。
「あっ…」
「あらあ、こんにちは。椎名さん、だったかしら。芝田です」
看護師の芝田さんが、ニコニコしながら上って来た。
「なにか、お困り?」
「あ、はい……。お見舞に来たんですけど、迷ってしまって。
一度来た事があるんですけど、確か階段のすぐ傍の病室だったはずなのに、全然見つからなくて」
「3階?」
「…だったと思うんですけど…」
「なんて方?」
「加賀月子っていいます」
「ああ、加賀さんね。ええと…ちょっとこっち、来て」
階段を上る芝田さんの後について、再び3階のフロアに立つ。
「この奥にね、もう一つ階段があるのよ。
たぶん、椎名さんが言ってるのはそっちの階段のことじゃないかしら」
なるほど。
階段が二つあるなんて、気付かなかった。
「ずーっと真っ直ぐ行けば、分かると思うんだけど」
「はい、行ってみます。ありがとうございます」
頭を下げ、背中を向けたところで、…ふと振り返る。
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