恋人魚

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 震える彼女の肩を力強く抱いて、僕は白砂に腰を下ろす。  すると、微かに海水が制服に浸みてきたのを感じたが、それよりも彼女の躰の冷たさの方が皮膚を伝って凍みてきた。  だが一瞬だけ、人の体温ではなく、爬虫類などの体温を思い描き、それを振り払う。  彼女が着ている白いワンピースは、すっかり海水で濡れているらしく、その下の彼女の肌は張り付かれ、透けて見える。  それは、見ている僕の方が寒くなってきてしまいそうだった。  それで、とにかく彼女を温めなくてはいけないように思えてきた。  彼女の家に帰した方が良いのだろうか?  それとも僕の家に連れて行って、温めた方が良いのだろうか?  何にしろ、今僕は彼女と離れたくはない。  僕の家に連れて行こう。  今の時間帯に僕の家に誰かが居ることなどあるはずない。  きっと大丈夫だろう。  僕がこんな事を考えているうちに彼女は徐々に落ち着いてきて、僕にしがみついたまま、彼女自身の細い指で涙を拭く。  そして、か細い声で今度は僕の耳に囁いた。 「今の名前は何とゆうのですか」  彼女は静かに僕を見上げる。  僕は質問の意図を計りかねたが、普通に答えた。
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