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「あら、剣道部の合宿以来かしら。どうしたの、わたしお邪魔かしら?」
朋美がお弁当を仕舞いながら晶子の顔をチラリと見た。晶子はまた朋美が自分をからかっていると思った。
「わたしは大丈夫よ。一樹さんも大丈夫でしょ」
「ハハハ、晶子さんの言う通りさ。朋美さんもいた方がいいよ。というのは、今朝のホームルームで全国模試の話があったでしょう。実は、僕は夏休み前に受験を申し込んでるんだ。そのために剣道部の合宿よりも塾の夏季講習を優先してたんだ」
「ああ、それで合宿に参加してたわたしたちを笑い物にしにきたということね」
「朋美さん、ひどいなぁ、その言い方は。そうじゃなくて、僕は少し自信があるので、晶子さんたちも受験するのなら、いつでも英語と数学で分からないところの相談に乗れるよって、言いに来たんだ」
「自信があるって、すごいじゃない。それで、澤本くんは全国で何番くらいになれるのかしら?」
「結構、朋美さんの今日の言葉には棘があるね。そりゃあ、昨年の模試受験者は百五十万人くらいいるんだから、一万番以内に入ったら御の字だね」
「それって、百五十人で一番っていうこと?なんか望み低いのね。やっぱり、庶民的発想ね」
「庶民、庶民って、朋美さん、馬鹿にするのはやめて欲しいな。庶民は立派なステータスだし、選挙では圧倒的な数で世の中を動かすこともできるんだから…」
「はい、はい、それで、百五十万人中で一番って人もいるんでしょう。それはいったい、誰?」
「一応、ネットとかで集めた資料を持ってきたから、ちょっと待ってね」
一樹は、小脇に抱えていたファイルを開いてその資料を探した。
「ああ、あった。これこれ、えーと、昨年の全国総合一位は、私立星天高校二年生の二宮祐二だ。英語、数学両方とも満点だね」
「えっ。二宮祐二?」
朋美と晶子が顔色を変えた。
「どうしたの、この人のこと知ってるの?」
「あの二宮祐二が二年生の時に、全国模試で一番?問題がやさしかったのか、彼が天才なのか。それとも、ほかに何かあるのかもしれないわね。晶子、わたしたちもそのお受験、申し込んでみましょうよ」
「そうね。二宮祐二が今年も一番になれるのか、それも見ものね」
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