0人が本棚に入れています
本棚に追加
「しっかしぃ、驚いたわ。祐二がカンニングで即行、退場になるなんて」
午前で全国模試が終わって、朋美が感激して晶子を自分の部屋に連れて来て、祝杯をあげようということになったときの彼女の第一声だった。もちろん、翔も呼んでいた。
「あの生意気な祐二の泣きっ面が目に浮かぶよ」
翔も興奮していた。
「でも、あの退場する時の祐二の眼には寒気がしたわ。何か、必ず報復してきそうよ」
晶子は、祐二の凍りつくような眼差しを思い出した。
「それでも、晶子、お手柄よ。どうやって、祐二のカンニングを見破ったの?」
朋美は祐二の報復よりもいまは晶子の栄誉を讃えたかった。
「それが、わたし、あの男を見たの」
「えっつ。なに、あの男って?」
「河原のところで朋美とわたしを殺そうとしたあの透明人間よ」
「えっ、透明人間!すると、俺が晶子と海岸にドライブした時に出くわしたあの殺人鬼と同じ奴か?」
翔もその白い男には直接遭遇しなかったが、晶子のおかげで危うく難を逃れたことがあった。
「そう。あれは生霊族といって、わたしもその血を半分受け継いでいるんだけど。あの男は普通の人には見る事の出来ない透明人間でも、わたしには白く色彩のない姿に見えるの」
「その透明人間が祐二のカンニングの手助けをしてたというわけ?」
「そうなの、朋美。あの透明男が突然試験会場に現れて、祐二の取り巻き四人組のところへ行って彼らが作った解答のメモを受取り、それを祐二の机にそっと置いていたの」
「なんて、巧妙な手口だ。これじゃあ、晶子でなきゃまったく分からない。完璧なカンニングだ」
翔の言葉を受けて、朋美が首をかしげた。
「それにしても、祐二は昨年の全国模試で一番になったということは、一年前も同じ方法でカンニングをしてたってこと?」
「そうね。そういうことになるわね」
朋美の指摘に晶子は祐二とその透明男の関係が少なくとも一年間は続いていることを思い知った。
最初のコメントを投稿しよう!