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と、その時、翔の携帯が鳴った。
「はい、蒼井翔です。おおっ、さくらさん。どうしたの?」
朋美と晶子はさくらという名を聞いて、翔に注目した。
「えっつ。浩一が全国に指名手配?そうか、わかった。すぐにこちらでも見てみる。ありがとう」
そう言って、翔は電話を切った。
「どうしたの、翔?浩一さんがまさか放火の犯人だったというの?それで指名手配になってるの?」
「いや、それはよくわからないよ、朋美。さくらさんの話だと、テレビの報道で、この前のカラオケ火災事件のとき防犯カメラに映っていたという男の顔を見たら浩一だったというんだ」
朋美はそれを聞いて、すぐにテレビをつけてニュースをやっている局を探しあてた。しばらくして、テレビ画面がカラオケ火災事件の報道になったとき、翔と晶子もそれを見た。
「おっつ、あれだ、あれがさくらさんの言ってた、防犯カメラの映像だ」
翔が水玉模様のソファーから身を乗り出して画面を指差した。そのとき、晶子は「あっつ」と声をあげた。
「どうしたの、晶子。なにかあるの?」
「朋美、テレビの映像だけでははっきり言えないけど、この浩一さんの後ろに映ってるのは、今朝の試験場でカンニングを手助けしてたあの透明男に似てると思うの」
そう言って、晶子はテレビの側に行き繰り返し映し出される防犯カメラの映像で、ぼんやり影のようなものが映っているところを指差した。
「えっつ。この薄い影みたいなのがそうなの?」
朋美は驚いて、翔と顔を見合わせた。
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