0人が本棚に入れています
本棚に追加
***
晶子は朋美の部屋ですぐに携帯を取り出して南雲太郎に電話した。南雲は警視庁にいた。
「どうした、晶子。何かあったか?」
「おじさん、あの六本木のカーディナルというカラオケ店の火災のことだけど、全国に指名手配になってる男の人を知ってるの」
「何いっ。そうか。それは誰なんだ?」
「小林浩一という男の人で、翔の友達なの。それで、わたしは朋美とあの放火があった夜、カーディナルで彼を見かけたわ」
「あの東町署で見た蒼井翔君の友達か。ふーむ、わかった。早速、所轄の署に連絡を入れる」
「それで、おじさん。お願いがあるんですけど」
「なんだ?」
「その前に、あのテレビで放映していた防犯カメラの映像は特殊なカメラで撮ったものなの?」
「それは赤外線カメラの映像だ。カーディナルは各部屋に防犯カメラが設置しているようなのだが、出火のあった三階の一七号室は使われていなかったので、暗室でも撮影できるように自動的に赤外線カメラが作動するようになっていたそうだ。そのカメラに、お前の通報してくれた小林浩一の顔が写っていたというわけだ」
「やっぱり、そうだったの。それじゃ、浩一さんが放火犯の容疑者になってるの?」
「いや、そうじゃない。映像にある彼の行動に不審な点がいくつかあるので、重要参考人として公開捜査されているのだよ」
「おじさん、それでわたしのお願いだけど…」
「うむ。何だ?」
「その防犯カメラに写っていた映像をわたしにも見せてもらえませんか?」
「何っ。それはどういうことだ。何か心当たりがあるのか?」
「はい。確信はないけど気になることがあって。それで、どうしてもその映像を観て確かめたいの」
「分かった。その映像のコピーは本庁にも届いている。その代り、晶子は姿を消したままで見てもらうぞ」
「わかりました。いまから朋美のお邸を出てすぐに、本庁におじさんを訪ねます」
最初のコメントを投稿しよう!