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いろいろあった夏休みも終わり、残暑の中で二学期が始まった。秋葉高校二年B組は、久々の再会で夏休みの体験談などを情報交換しているのか、生徒たちの陽気な笑い声で満ち溢れていた。そんな雰囲気の中で晶子も何とも言えない新鮮な気分を味わっていた。だが、夏バテなのか朋美だけは元気がなかった。
放課後、晶子と朋美が一緒に校門までやって来ると、しゃれたジャケットを羽織った蒼井翔が待っていた。
「やあ、元気にしてる?何だか、朋美は元気なさそうだね」
そう言いながら、翔が朋美の顔を下から覗くように伺った。
「また学校の授業が始まるかと思うと、もう朝からずっと憂鬱なのよ」
朋美が肩を落として言った。
「だから、俺がここで待っていたのさ。これから、六本木のクラブに行こうよ」
「クラブ?ああ、そう言えばだいぶご無沙汰だったわね」
「今夜は、何か特別な催しがあるらしいんだ。パーッと盛り上がろうぜ。晶子さんもね」
「わたしは、あまりあの雰囲気は好きでないけど…」
晶子が消極的な返事をすると、朋美が急に生き返ったように晶子の肩を両手で抱いた。
「行こう、晶子。そうよ、これよ、この雰囲気よ。これがわたしの活力源なのよぉ」
そう言うと、朋美は晶子の手を引いてサッサと、翔が校門脇に止めていた白いスポーツカーの方に向って歩き出した。
翔たちは一旦朋美のお邸に寄った。招待状は朋美にも届いていた。朋美の部屋で朋美と晶子はクラブ用にドレスアップして、夕刻になるのを待った。晶子はその間に、オカミさんに遅くなる旨の連絡も入れた。
六本木のクラブは晶子が夏休み前、朋美に連れてこられたところだったが、その時よりかなり雰囲気がゴージャスになっていた。なによりも、入り口は派手なイルミネーションで飾られていて、隠れ家の趣はもうなかった。内装で最初に目を引いたのは何本ものガラスの支柱が七色の照明に輝く光景だった。しかも、朋美がクラブに入って席に着くまでの間に、以前ならすぐに何人かの知り合いが彼女に声を掛けてきたが、この夜はそういうこともなかった。
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