0人が本棚に入れています
本棚に追加
晶子は朋美と翔に事情を話して、翔のスポーツカーで警視庁付近まで送ってもらった。そこで車を出る前に晶子はふわりと姿を消して透明人間に変身した。そしてそのまま、警視庁の南雲のいる刑事部捜査一課まで歩いて行った。晶子はデスクにいる南雲を見つけるとそばに近づいて耳元で囁いた。
「おじさん、晶子です」
南雲はその声に小さく頷いて、座っていた椅子から立ち上がり通路へ出た。
「晶子、これから分析センターに行く、そこでこの事件の映像分析を行っているのでわたしについてきなさい」
「はい、おじさん」
分析センターに入ると、南雲はまっすぐ映像処理を行っている担当者、佐々木肇のところに歩み寄った。
「どうだ、佐々木さん、例のカラオケ店の不審火だけど、現場の映像をもう一度見せてもらえないかな」
「あっつ。南雲さん。わかりました。どうもあの映像は腑に落ちないんですよね」
そう言いながら、肇は机の上の21インチ・テレビモニターにカーディナルが撮影した防犯カメラの映像を映し出した。
南雲は肇の肩越しにそれを覗き込んだ。晶子も南雲の横からその画面を観た。映像は最初、暗がりの中で開け放たれたドアが映し出された。
「ドアは最初から開いていたのだろうか?」
南雲が独り言のように呟いた。
「そうですね。開いていたようですね。この映像からはなんとも言えませんが、人影が写っていなかったので、この前のシーンはカットされているのでしょう」
やがて、画面には男の人がドアから入ってくるのが映し出された。
「これが、重要参考人の男だな」
「そうです。彼がここから部屋に入ってきます」
「明かりはつけずに入ったようだな」
「というよりも、彼は通りがかりにこの部屋で何かを観て驚いたように見えますね。そして、これです」
突然、画面の右手隅がぱっと明るくなった。明らかに炎が上がった映像だった。
最初のコメントを投稿しよう!