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晶子がひとりで黒塗りの高級車に乗るのを、翔が見て不審に思った。翔は約束をしてはいなかったが、警視庁近くの路上で晶子の帰りを待っていたのだった。翔は急いで自分のスポーツカーに乗ると、その車の後を追った。そして、イヤホン付きの携帯で朋美に連絡した。
「朋美、大変だ。晶子がよその車にひとりで乗っている」
「どういうこと?なぜ、晶子が翔の車じゃなくて他人のに乗らなきゃいけないのよ」
「あれは高級車だから、祐二と関係がありそうだな」
「祐二の報復?彼に拉致されたってこと。あの透明人間も関係してるのかしら?」
「晶子がひとりで他人の車に乗るわけないから、恐らく、背後に透明人間がいて銃か何かで脅かされていた可能性が高いな」
「で、翔、あなたどうするの?」
「とりあえずその車を追跡している。どこかに止まる筈だからその時にまた、連絡する」
「わかったわ」
翔が追跡を続けるうちに、その車は六本木のクラブ・クリスタルの地下駐車場に入って行った。翔は、クラブ・クリスタルをやり過ごして一区画離れた車道のパーキングエリアにスポーツカーを止めた。そして、朋美に連絡した。
「どうしたの?晶子は大丈夫?いまどこ?」
「おいおい、質問攻めじゃ答えられないよ。いいか、驚くな、クラブ・クリスタルにあの車は入って行ったよ」
「そう。やっぱり、祐二の仕業ね。いったい、晶子をどうするつもりかしら?」
「うむ。俺たちだけじゃとても助け出せそうにないな」
「俺たちって、あなたがしっかりしなければだめじゃないの」
「朋美はどうするんだ?」
「わ、わたしは、いまは何もできないわ…」
「あの、南雲刑事に連絡するというのはどうだ?」
「そうね。分かった、わたしが連絡するわ。でも、翔もがんばって晶子を助け出さなくちゃだめよ」
「わかった、とりあえず、クラブ・クリスタルに潜入してみるよ」
「じゃあ、また携帯で連絡を取り合いましょう」
「OK」
携帯を切ると車を出て、翔はそこから歩いてクラブ・クリスタルの地下駐車場に入って行こうと思った。だがその駐車場入り口に入ろうとしたとき、背後から何者かにいきなり後頭部を痛打されて、翔はその場で気を失った。
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