0人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんか、雰囲気変わったぁ。翔は最近までよく来てたの?」
朋美は少し浮きあがったような感じを受けているようだった。
「ああ、俺も最近は来てなかったけど、この前、招待状が届いてるのに気がついて、お前たちを誘ってみたんだ。おっ、あそこに浩一がいる」
翔は、客席からバーコーナーに戻るクラブの従業員の小林浩一に声を掛けた。
「お久しぶりです。翔さん、それに朋美さん…」
「何かさぁ、雰囲気変わったね。何かあった?」
翔の問いかけに浩一の顔色が変った。そして、耳打ちするように囁いた。
「実は、最近、新しい仕切りが入ったんですよ」
「何だ、それ?」
「オーナーが代わり支配人も飛ばされて、いまここを牛耳ってるのは二宮祐二なんです」
「二宮?あの二宮グループか?そして、祐二?あいつまだ高校三年生くらいだろうが」
「そうです。二宮グループの後継ぎは長男の祐一郎と決まっていて、弟の祐二はもっぱら遊びの分野で幅を効かそうとしてるらしいですよ」
「ふーん。それで、このクラブが祐二の支配下に入ったということか」
「だから、新しい支配人も祐二のお気に入りを連れてきたし、内装や経営もよりずっと豪華で派手にしてリッチなヤング層の新しい客を引き寄せようとしてるんですよ」
「それじゃあ。この招待状は二宮祐二の差し金ということになるのか?」
「今夜は、新装開店のような、そんなお披露目の場になると思いますよ」
そこまで言って、浩一はほかの従業員の眼が気になるのか素知らぬ顔でカウンターの奥に消えた。
やがて、そのお披露目が始まった。眼鏡をかけたイケメンだが少年っぽい小柄の男が美麗なスーツ姿で、頭上に大きなミラーボールが回るステージに現れた。それが二宮祐二だった。取り巻きの黒スーツ姿の男たちが四人、祐二の後ろについていた。いずれも祐二と同じ年頃の若者だった。
「さあ、皆さん、今宵は大いに楽しんでいってください。今日から名前が改まった『クラブ・クリスタル』は、若者によるよりハイソサエティで、エキサイティングなクラブを目指しております」
最初のコメントを投稿しよう!