0人が本棚に入れています
本棚に追加
翌日の午前、晶子は体育館でのバレーボールの授業中に体操着姿の伊藤さちえに声を掛けられた。さちえは晶子とは別のクラスで二年A組だったが、この日は合同授業で一緒だった。
「晶子さん、剣道部の夏合宿以来ですね。お元気ですか?」
小柄のさちえは話し声も小さく、言葉遣いが丁寧だった。
「さちえこそ、お久しぶり。合宿ではがんばったね」
「みんな、晶子さんのおかげです。それより、三年生ののぶえさんが合宿の打ち上げパーティーはないのかってわたしのところに言ってきてるんです」
「打ち上げパーティー?女子だけの?」
「そうです。わたしたち五人のパーティーです」
「それで、いつやりたいと言ってるの?」
「まだ学校始まったばかりだから、放課後ならいつでも良いと思います。早い方がのぶえさん喜ぶと思うし…」
「それでお店とか場所は、どんなとこ考えてるの?」
「それが、のぶえさんはあの時、炭焼き小屋での宴会ムードが大変気に入ったらしくて、歌って、踊れるところが良いってひとりで張り切ってるんです。そんなお店、晶子さんご存じですか?」
「わたしはその方面はまったく疎いから、だめよ。でも、待って。そうだ、マネージャーの朋美なら知ってると思うわ。彼女に相談してみるわ」
「そうですか。ぜひマネージャーに相談してみてください」
その日の昼休み、夏休み前と同じように屋上で晶子は朋美とお弁当を食べた。そこで晶子は体育館でのさちえの話を持ち出した。
「というわけで、打ち上げパーティーというのをやりたいらしいの。どこか良いところないかしら?」
「そんなのたくさんあるわよ。要は踊って歌えるところでしょう。でも、のぶえさんが言い出しっぺなら、カラオケね」
「カラオケ?」
「そう、もっとも庶民的な遊びよ」
「そこは、歌って踊れるとこなの?」
「踊れるところなら昨日のクラブが良いけど、あそこは庶民的じゃないでしょう」
「確かに、ゴージャスだったから、剣道部女子の雰囲気ではなかったわ」
「大丈夫よ。カラオケと一口に言ってもピンキリだから」
そう言いながら、朋美は携帯を取り出して電話をかけまくり予約を取った。さちえは五人のパーティーと言っていたが、どうやら朋美も積極参加するらしかった。
最初のコメントを投稿しよう!