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 和真さんはうん、と頷いて、 「まあ、それだけ分かってやってれば充分なんじゃない? この歳になれば、誰にでも過去の恋愛の一つや二つ、あるのが普通だし。 だってさ、春山センセーもいい加減、いい大人なのに…」  和真さんは一歩足を踏み出して、わたしの耳元に口を寄せた。 「いざエッチしてみて、未だにあの人が童貞だったらドン引くでしょ?」 「……」 「お。顔、すげー赤い。…最近の女子高生にしては新鮮だね、リアクションが」  和真さんは可笑しそうに、あはは、と笑った。  ……このひと……  やっぱり春山先生のお兄ちゃんだ。  間違いなく、先生と同じ血が流れている。  赤くなった頬を手のひらで扇ぎながら、ふと見ると、和真さんがじっとわたしの顔を見つめていた。 「……テツの心が今、過去にあるのかどうかなんて、俺には、分からない」  和真さんは、少しさみしそうな笑顔を見せた。 「だけどとりあえず、アニキの願いとしては……。 あいつには、好きな人と幸せになって貰いたいかな。 何も考えずに、ただ楽しく生きて行って欲しい。――とか言ってみたり」  少し照れたのか、和真さんはひょい、と肩をすくめた。  …優しいお兄さんなんだ…。  普段はセクハラしかしないけど、…あれはきっと、春山先生をからかって遊んでるだけで…。  本当の和真さんは、こんなに紳士で、…暖かい。  わたしはふっと微笑んだ。  こういうところも、…先生に、似てる。
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