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「こんなに並ぶと、やっぱすげえな」
夏川と、数百もの展示作品一点一点を見て回る。
高文祭・美術工芸部門の会場になったのは、隣市にある市立体育館。こんなに立派な建物があったんだと初めて知った。
冷房の効いた大ホールに一斉展示された作品をぼんやり眺めて歩くぼくに、夏川が言った。
「あれ、おれたちのだ」
夏の景色が描きたいんだと言い張った結果、展示会場へ運ぶ前日にやっと完成した、夏川の作品。
青と緑を主調とした、鮮やかで力強いタッチの絵の隣で、彼女はまどろむ。
「対照的だよなあ」
夏川がつぶやく。
「おまえの『彼女』、おれ好きだ」
そう言われて、ちょっと笑う。
肌を合わせたあと、ソファの上でまどろんでいた美津をスケッチしたやつを描き起こして、油絵にした。
茶色の背景に白い肌が映えて美しかった美津は、あの頃の思い出と共にずっとそばにいてくれるだろう。
ぼくの全てを注いだ作品として。
了
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