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小さい頃、交わした約束をあなたは覚えているかしら?
お互い性別も好きという感情さえ定かじゃなかった。
それでも、ここが鳥籠だということに気付かなかった頃に交わした約束だけが私(ワタクシ)にとって“唯一あるもの”だった。
夜の帳は全てを隠してくれる。
白いシーツに包まりながら私は隣の男の背に甘える。
「ねぇ、ジェス。好きよ」
紡がれる睦言の全てが幻だということをジェスは知っている。
「そろそろ、帰る」
起き上がるジェスの腕に私は縋り付く。
「行かないで」
「そういうことは、本当の想い人に言うべきです」
私は縋り付くのを止めた。
「やけに冷たいのね、さすが氷の騎士様。いつもは付き合ってくれるじゃない」
「それで、本当に嫁ぐのですか?」
「ええ、決めてるの。以前言ったでしょう?」
「そうでしたね、失礼いたしました。なんで俺なんですか?他にいたでしょう?」
ジェスの体に頭を預けながら少しだけ考えた。
確かに関係を強要できる相手は他にもいた。
例えば、私に好意を抱いている男とかーー。
「なんでかしらね……」
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