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あの時、なんで最後にサフィとお話ししようと思ったかなんてわからない。
サフィは好きだけど苦手なのに……。
心境の変化、というものでしょう。
それがあったとすれば、朝だわ。
まだモーニングティーを飲み終えたばかりの頃に、弟のクルストは私に部屋に来た。
「こんな早くにどんな御用事かしら?」
テーブルにきちんと着くなんてなんて何年ぶり?
面と向かってちゃんと話すのは、あの時以来だわ。
クルストは私の婚約が決まってから明らかに私を避けていた。
姉弟と言っても同じ年齢、ただ母親が違う。
「最後に話がしたくてさ。なんで、シュメールと関係を結んだ?」
「今日はえらくストレートね。私のことなんて気にもかけていないと思っていたのだけれど」
「なぁ、あの日の約束を覚えているか……」
出来るだけ冷静に話そうと思っていたのに、クルストは簡単に私の心臓を弾かせる。
お茶を飲みながら、目を閉じる。
『おおきくなったら、ボクとケッコンして?シャーリー』
『うん、わたしクルストのこと大好きだよっ』
『ヤクソク、だよ?』
『うん、ヤクソクねっ!』
それが叶わぬことと知らず、それが口にしてはならないとわからず交わした幼い頃の拙い約束だった。
それを覚えているのも信じていたのも私だけと思っていたのに。
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