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目を開けて、私はクルストに微笑む。
ぎこちなかったと思う。
いつでも優雅で姫らしくいる私にしてはやけに不細工な微笑みだと思う。
「覚えているわよ、ずっと信じたかったもの。でもあなたは信じさせてくれなかった。聞いてしまったの、あなたがパルタ・マルゴとの婚約をお父様に進言しているところを。なんでそんなことしたのよ?」
「だから、シュメールなんかに女にされたのか」
「そうよ、誰でもよかった。あなたの嫌ってる人間なら……」
いつもはゆっくり口を開くのに、今は口早になってしまう。
まったく、自分に嫌気が差すわ。
なんでジェスか……?
そんなの決まってるじゃない。
クルストへの嫌がらせだからよ。
少しでも嫉妬してくれれば嬉しかった。
でも噂を耳にしてもクルストは顔色さえ変えなった。
それは今も同じね……。
「なんで進んで私を婚約させたの?好きだったのに……。あなたも同じ気持ちと信じていたのにーー」
「それは……」
話すべきじゃなかったわね……。
心のままに口が勝手に動いてしまう。
でも自分を止められそうにないの。
今の私はお姫様の顔をしているかしら?
「もういいわよ。私が死ぬことに代わりはないんだから……」
もう決まっていること。
私は異国の地で処刑されるのだと。
パルタ・マルゴとはそういう国だから。
結婚に於いて女が処女であることがもっとも重要視される国。
そういう国とわかっていてクルストは私を嫁がせるのだ。
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