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「活字嫌いで小説はからっきしでした。文字ばかりだと登場人物に感情移入出来なくて。漫画の方が好きでよく読んでましたよ。」
「俺はいまだに漫画ばっかりですよ。」
カウンセラー室に戻り本を棚に入れながら、某バスケの漫画の話とか、某剣術師の漫画の話とかで盛り上がる。
それから学生時代に見ていたテレビの話も盛り上がった。
「意外と2、3歳差だと似たようなもの見てるんですよね。」
郡山は最後一箱の封を切って、亜希に本を手渡す。
「そうみたいですね。」
「なのに、10歳違うと不思議と話が合わなくなる。『十年ひと昔』って言いますけど、あれ、本当ですよ。」
「そうですか? 郡山先生も、高校生と混じっていてもあんまり変わらない気がしますけど。」
「いいえ。生徒が何を言いたいんだか、頭を捻る毎日ですよ。」
亜希はクスクス笑いながら郡山の話の相槌を打つ。
そして、片付け終わると立ち上がってスカートの埃を払った。
「お手伝い、ありがとうございました。」
亜希と郡山の持ってきた本は、量が多いように思われたが、意外なことに本棚にぴったりと収まった。
亜希は郡山に一服させてあげたかったが、あいにく今日はお茶もポットもない。
「あの、自販機に飲み物を買いに行きませんか? お礼に奢りますよ。かなりこき使っちゃいましたから。」
幾分、打ち解けて話す亜希の様子に、郡山も笑みを零す。
「こちらこそ話がこんなに合うとは驚きました。ここに入り浸っちゃうかも。」
亜希がクスクスと笑うから、ますます郡山は上機嫌になる。
(……明日からの学校生活に、心躍るな。)
亜希は小銭入れを手にすると、郡山と階下に向かった。
一階奥の学食に来ると、缶コーヒーとスポーツドリンクを買う。
だいぶ動いたからスポーツドリンクが冷たくて美味しい。
「ご馳走様です。」
「いえ、こちらこそ手助けしていただいて、ありがとうございました。」
時間は15時を回ったくらいだろうか。
「じゃあ、俺は自分の仕事に戻りますけど、職員室に居ますから、今度こそ来て下さいね。」
「はい。」
郡山は缶コーヒーを飲み終えて学食を後にした。
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