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五年前、四月二日。
ちょうど高校三年生の春のことだ。
空は花曇り。
始業式は体育館で行われた。
その前に亜希はクラス分けの表を見に行く。
「亜希は何組だった?」
クラス分けの表の前は、黒山の人集りで、悲喜こもごもな反応を生徒たちは見せている。
亜希の制服の袖を引いたのは片桐 紗智で、この高校二年間、クラスが一緒だったこともあり、いまや親友とも言える同級生だった。
「まだ見てない……。紗智は?」
「私は一組だった。亜希のは見つからなかったからもう一度探すところ。翔は五組で遠くなっちゃった……。あー、早く新校舎作って置いてくれれば、翔とも同じ階になれたかも知れないのに。」
「ドンマイ。階段を登ればすぐだから、ね?」
亜希に宥められても紗智は泣きそうな顔をしていた。
小野山 翔は、紗智の彼氏で今年は剣道部の主将になると聞いている。
結構、人気のある男子で、昨年のクリスマスに彼カノになってからは、亜希にのろける事も多かったから無理もない。
「そういえば、翔君とはうまくいってるの?」
「うん、順調!」
亜希と紗智は、引き続き人集りの後ろでジャンプをしながら、クラス分けの表を順番に見ていく。
紗智とはクラスが違うらしく一組には名前が無い。
また、体育や家庭科が合同になる二組にも名前は見当たらなかった。
「ありゃあ、紗智とは完全に離れちゃったみたい……。」
「ええ! ……そんなあ。二組にもいないの?」
「いない。」
紗智はがっかりしたような表情に変わる。
その一方で三組の一覧に亜希は自分の名前を見つけた。
「……あ、あった。三組だ。」
だが、紗智の反応がなく、亜希は隣に立つ紗智の様子を伺った。
「亜希とも離ればなれなんて……。」
「紗智? そんなに気を落とさないで。」
「……なんで。」
亜希も紗智と離ればなれは淋しかった。
でも、今さらこの発表が覆るわけでは無いから、亜希は紗智を励ます言葉を色々考えた。
しかし、それを待つことなく、紗智は突然スイッチが入ったかのように、俯いていた状態から、ぐっと顔を上げるとスウッと空気を吸って大声で叫んだ。
「なんで、私は三年間、ガッツの教室なのーっ!!」
その叫び声はびっくりするくらい大きくて、周りの生徒の注目を集める。
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