迷い

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さっきまでのキラキラしたものが、一瞬で真っ黒に染まる 私が謝れば、この場はおさまるけれど。 こんなんじゃ、ダメだ。 こんな始まり、きっと後で上手くいきっこない。 「ずっと下手に出なきゃ、ダメですか」 「……」 「ずっと、そうやって。イチさんの気分がいいように、私はいいように扱われなきゃ、いけないですか?」 気がついたら、視界がぼやけて。 「そんな、強くなんかないです、私」 もう少しだけ 私のこと、 考えらんないですか? 「泣くほどのことかよ」 「泣きたくもなります」 ポロポロ、泣いて こんなの、イチさんが一番嫌いな事、してる。ってわかってる 泣いて済むなんて思ってない でも、悔しくて。 「置いていくぞ」 「もっ――」 もう、いい―― 「好きじゃなかったら、キレたりしねーよ」 ひょい、と。 捕まれた手のひら。 引っ張られて 歩く、人混みの中 「お前だって俺の事、わかってねーんだよ」 不器用で それでも、イチさんが 頑張って、くれた。
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