-2-

9/11
1110人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
ウエイトレスが去ると、レナさんはそれをブラックのまま啜り、ソーサーの上に戻した。 「…それじゃ、…他に何か、…わたしに出来ること、ありませんか」 わたしはテーブルの下で手のひらを握りしめ、言った。 「白井さんがそんな危険なことに関わってるんだとしたら…。わたし、心配で勉強なんて手に付きません。 あんまり、頼りにはならないかもしれませんけど、もし出来ることがあれば、言って下さい」 レナさんは心配そうに首を傾げ、わたしの顔を見つめた。 「萌ちゃんをこんなことに巻き込んで、…本当に申し訳ないと思ってる。 でも、…白井くんが心を許す数少ない相手だから…。萌ちゃんに…一つだけ、お願いしたいことがあるの」 「わかりました。…なんですか」 「…驚かないで、聞いてくれる?」 そう言って、レナさんはやや上目づかいにこちらを見た。 「おそらく、留守電を聞いた限りでは、その『例の物』っていうのは、何かの映像データだと思うの。 だから…。私ね。 …あの仕事部屋に忍び込んで、白井くんが隠している、その映像データを探し出そうと思ってるの」 わたしは目をまんまるに見開いた。 「忍び込むって…。そんなことして、大丈夫なんですか」 「だって、…鍵は取り上げられちゃってるし、訪ねて行っても、部屋に上げてくれないし、…あとは、忍び込むしか方法がないでしょう?」 「だけど、…いくら知ってる人の部屋だからって、勝手に入ったら…」 「…白井くんの命がかかってるのよ」 ずしりと重みのある言葉に、わたしは口をつぐんだ。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!