1110人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
ウエイトレスが去ると、レナさんはそれをブラックのまま啜り、ソーサーの上に戻した。
「…それじゃ、…他に何か、…わたしに出来ること、ありませんか」
わたしはテーブルの下で手のひらを握りしめ、言った。
「白井さんがそんな危険なことに関わってるんだとしたら…。わたし、心配で勉強なんて手に付きません。
あんまり、頼りにはならないかもしれませんけど、もし出来ることがあれば、言って下さい」
レナさんは心配そうに首を傾げ、わたしの顔を見つめた。
「萌ちゃんをこんなことに巻き込んで、…本当に申し訳ないと思ってる。
でも、…白井くんが心を許す数少ない相手だから…。萌ちゃんに…一つだけ、お願いしたいことがあるの」
「わかりました。…なんですか」
「…驚かないで、聞いてくれる?」
そう言って、レナさんはやや上目づかいにこちらを見た。
「おそらく、留守電を聞いた限りでは、その『例の物』っていうのは、何かの映像データだと思うの。
だから…。私ね。
…あの仕事部屋に忍び込んで、白井くんが隠している、その映像データを探し出そうと思ってるの」
わたしは目をまんまるに見開いた。
「忍び込むって…。そんなことして、大丈夫なんですか」
「だって、…鍵は取り上げられちゃってるし、訪ねて行っても、部屋に上げてくれないし、…あとは、忍び込むしか方法がないでしょう?」
「だけど、…いくら知ってる人の部屋だからって、勝手に入ったら…」
「…白井くんの命がかかってるのよ」
ずしりと重みのある言葉に、わたしは口をつぐんだ。
最初のコメントを投稿しよう!