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塾の授業が終わり、外に出た時には、既に陽が落ちかけ、薄暗くなっていた。 冷たい風に吹かれ、思わずバッグを身体の前で抱きしめる。 -―今日は、全然集中できなかったな…。  白井さん宛ての恐ろしい留守電の内容と、レナさんの『作戦』のことがちらついて、…授業に全く身が入らなかった。  とりあえず、わたしが今日、白井さんに電話をして、さりげなく仕事のスケジュールを確認するということで、レナさんとは別れたのだけれど…。  …ていうか…。  …さりげなく、とか、…私にできるのかな…。 『萌ちゃんなら出来る!』と根拠のない太鼓判を力強く押されたけれど、…時間がたてばたつほど、そのレナ判の効力が薄くなっていく。  色々な事を考えすぎて、頭の中が筋肉痛になってしまった気がして、わたしは歩きながら、左右に順番に首を倒し、肩を伸ばした。  とにかく、何があっても、勉強だけはしっかりとこなさなければいけない。  今日取りこぼしてしまった分は、家に帰って今夜中にやってしまおう。後回しにすると、絶対に後々、きつくなってくる。  そう。今、頑張っておけば…。  わたしは、ふっと頬を緩めた。  ――来週の土曜日は、先生と初めての二人きりデートだもん。  それを思えばちょっとくらいの寝不足、余裕で乗り越えられるもんねっ。  デートを目撃されたら大変なので、おそらく高速に乗って遠出をすることになる。  ということは、……スキあらば、人前で手を繋ぐことも可能かもしれないわけで……。  あわよくば、腕なんか組んじゃったり……。  一人でニヤケていたからか、前から歩いて来たおじさんが怪訝そうな顔で通り過ぎて行った。
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