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バス停に着いてから、バッグから携帯を取り出し、電源を入れる。
こんな風に疲れた時は、…無性に春山先生の顔が見たくなる。
…本当は、たっぷり甘えたい。けど…。
…写メでガマン…。
ベンチに腰掛け、データBOXを開いて、先生の写真を呼び出そうとして、メールが届いている事に気付く。
『はるきち』
…あっ…。
わたしは急いでメールを開いた。
『塾終わったら電話して』
…なんだろう…。
期待半分、不安半分の気持ちで、はるきちの番号を呼び出す。
発信ボタンを押して耳に当てると、呼び出し音が2回で途切れた。
『はい』
いつもの、素っ気ない声。
「こんばんは…」
『こんばんは。…ちょっと、待って』
ガサガサと、風を切るような音がしばらく続く。
『…ごめん。今、職員室だったから』
「あ、すみません。お仕事中に」
『いや、大丈夫。…塾、終わったの。早かったね』
「はい。ついさっき。…今、バス停です」
『そう』
そこで、先生の声が途切れた。
「あの…。…何か、あったんですか」
『…うん…』
先生の歯切れの悪さに、ふと嫌な予感が過る。
そして、その予感は見事に的中した。
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