1110人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
『来週の土曜日、…ダメになった』
「…え…」
『ゴメン。…小林先生の代わりに、会合に出なきゃならなくなって』
「…そうですか…」
『誘っておいて、悪い』
かなり楽しみにしていた分、落胆は大きくて、…目の奥の方が、じわりと熱くなる。
それでも、その気持ちを押し隠して、わたしは出来るだけ明るい声で言った。
「お仕事だもの、仕方ないですよ。…また、いつでも行けるんだし」
『……』
先生が黙ってしまうと、わたしも言葉を発することが出来ず、長い沈黙が降りた。
『椎名』
「…はい」
『今、泣きそうだろ』
「…そんなこと、ないです」
『…嘘だ』
「ホントですよ」
『絶対、涙目』
「…違うってば…」
言われているうちに、本当に涙が滲んで来る。
『じゃあ、今から確認しに行く』
「……」
『今日は、何時に帰ればいい?』
「――10じはんっ」
嬉しさに満ち溢れた声で応えると、先生の呆れたような笑い声が聞こえた。
最初のコメントを投稿しよう!