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先生の少し不機嫌な顔と、わたしの緊張した顔。
携帯を手に、文化祭で撮った二人のツーショット写メをぼんやりと眺めながら、わたしは勉強机に向かっていた。
並んだ二人の間に空いた不自然な隙間が、以前は全く気にならなかったのに、…今は、何だかとても大きな溝のように感じる。
「…はるきち、だいすき…」
ボソ、と呟き、そっと画面をおでこに当てる。
その瞬間、携帯が振動して、危うく取り落としそうになった。
「…あ…」
メールではなく、電話だ。
その意外な発信者名を見て、わたしは驚いた。
「…はい、椎名です」
『…あ…。萌ちゃん?』
柔らかな、女性の声。
「はい…こんばんは。…どうしたんですか、レナさん」
レナさんは電話口でふふ、と笑って、
『びっくりした?初めてかけるからちょっと緊張しちゃった。
ごめんね、勉強中?』
「いえ、今、ちょうど休憩してたところなので」
『ホント?じゃ、このままちょっとだけ、話せる?』
「はい」
――なんだろう……。
用件が全く読めず、緊張したわたしは座り直し、姿勢を正した。
『今日、もしかして白井くんと会ってた?』
「えっ」
『今日は仕事が無いはずなのに、部屋にいないみたいだったかったから。
もしかして、萌ちゃんと一緒だったのかなって思って』
「……」
本当のことを言うべきなのか、わたしは一瞬躊躇した。
白井さんに聞けばわかることなのに、わざわざわたしに聞くということは、…何か、理由があるはずだ。
迷った挙句、変に隠すのもおかしいので、わたしは包み隠さず話すことにした。
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