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「白井さんが、そんなことするはず…」
「待って」
レナさんは慌てて言った。
「もちろん、お金をゆすり取るとか、そういうことを言ってるんじゃないの。
白井くんがそんな人じゃない事は、私も分かってる。
でも…。
彼が何か、大きなスクープを狙っていて、…何かしらの情報を得るために、誰かの弱みに付け込んで、っていうことなら、あり得ると思わない?」
「……」
わたしは考え込んだ。
白井さんの今までの行動を思い返せば、…真実を掴むために、そうやって危ない橋を渡ることは、充分想像できる。
そう思うと、じわじわと焦燥感に襲われ、わたしはつい早口になっていた。
「もし、白井さんがそんな危ないことしてるなら、止めなきゃ。レナさん、そのこと、白井さんに直接言ったんですか」
「…もちろん、言ったわよ。だけど…」
レナさんは、言いづらそうに口元を歪めた。
「逆に、怒られちゃって…」
「怒られるって…どうして?」
「うん…。…そもそも、私がこのことに気付いたきっかけっていうのが、問題で…」
レナさんが、しょんぼりとうなだれる。
「私、白井くんの仕事には、一切口出ししないし、首を突っ込まないって約束してるのね。
…それなのに…。
この間、仕事場を掃除してる時に、つい、聞いちゃったのよ。チカチカしてたから、気になって…」
「…何を、ですか」
「留守電…」
「留守電?」
白井さんの仕事場に、FAX機能のついた大きな電話機が置いてあったことを思い出す。
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