深海とダルメシアン

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帰ってくるとトノくんがマンションのまえに座っていた。 トオノさんからトオノくんに変わり、それからトノくんで呼び方は落ち着きつつある。 ヘッドフォンをして自転車置き場で足をブラブラさせている。 赤の半袖Tシャツに、グレーのフード付きのベスト。黒のカーゴパンツにハイカットのスニーカー。 今日はカジュアルだな。 「こんにちは」 覗き込むと、微笑んでからヘッドフォンを外してくれた。 「お帰りー。待ってたんだ」 「そうなん?今日は午後授業なかったん?」 「休講なった。」 エレベーターへ向かう。 「コレありがとう。」 トオノくんの耳には、私の作ったダルメシアンが揺れている。 小指の第一関節くらいの大きさの、犬。 「女の子に可愛い可愛いって触られまくり」 「犬が?トオノくんが?」 「どっちも」 髪を立てて無かったら、さらさらの髪で 本当に女の子みたい。
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