深海とダルメシアン

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五階に着いて、じゃ、と手をあげようとしたら背中を押された。 「ちょっと寄ってかない。」 「部屋に?」 「あ、言い方変えようか?」 ニヤッと笑って、肩に手を回すと。 「来いよ」 ダルメシアンが、揺れた。 「ダメ?肉食系ぽくなかった?りっちゃんにはコレじゃないのか。」 腕を外して口を尖らす。 「...仔犬つけて言われてもねえ」 「じゃ今度は可愛く言ってみようか?」 「いいから。何か用事なんじゃないの。いったん、部屋にカバン置いてくる。」 エレベーターを待つ。 「この前の曲出来たから、聞いて?」 ドアが閉まる直前に、滑り込んだ声。 体が、ふわっとした。 エレベーターだからというだけでなく、嬉しくて。 ドキドキした。 ものを作るということ、人が作ったものを見るとき。 血が騒ぐ。 舌なめずりする吸血鬼のようだ、これじゃまるで。 部屋にカバンを置いて、着替えをして階段で降りた
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