深海とダルメシアン

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結局本屋で一時間ほど目移りして、ミステリーと料理の本を買った。 帰りに商店街の酒屋で切らしていたウオッカとグレープフルーツジュースを買い、八百屋でリンゴとミカンとレタスとキュウリを買った。 けっこう荷物が増えてしまった。 マンションでまでもう少し、というところで、八百屋の買い物の袋が破れた。 落下したレタスが割れ、リンゴが転がる。 「嘘やん...」 ウオッカたちを抱いて、途方に暮れる。 「何やってんの」 聞き覚えのある声に顔を上げれば。 トノくんがリンゴを拾ってくれていた。 笑っている。 「オレンジとか転がしたり、漫画みてー。」 「ありがとう」 手を出すと、酒瓶の方の袋を引かれた。 「持ってあげよう」 落ちているミカンとレタスを袋ごと拾うと、 「おーい」 と呼びかけた。 黒い大きい人がやって来る。 「手出せ」 トノくんに言われて、その人は両手を出す。 そこに、レタスとミカンが置かれた。 「は?何すか?コレ」 「俺のご近所さんに親切」 黒い服の人は、無表情。 「すいません、知らない人にレタスとミカン持たせて」 「...ええよ。」 かなり背が高い。 「こいつは後輩。デカいけど」 「好きでデカイわけじゃないです」 エレベーターでトノくんが7階ボタンを押してくれる。 部屋まで運んでくれた。 「ありがとう。お礼に一杯飲んでもらいたいとこやけど、今恐竜いるからゴメンネ。」 黒ニット君が、目を開いた。 トノくんが、小さく手を振った。
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