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「君、覚えてない人にも挨拶すんだ?」
あ、標準語のイントネーション。
学生の多いこの街では、時々いる。
それでも関西から出たことのない私には新鮮である。
「まあ、挨拶は。」
「俺、多分同じとこ住んでんだよね。」
「はあ。で、帽子がなんとかって何ですか」
黒のファーの、つばが広めのお気に入りだ。
「アンタ、いっつも帽子かぶってる。もしかして」
「禿げてません。」
「いやいや、俺も帽子好きだけど、変わったの持ってんなと思ってて。さっき、信号の向こうからカッコイイ帽子来るなと思ったら知った顔だから、つい声かけちまってさ。」
その言葉に嬉しくなる。
「カッコイイ?」
頭を指差すと、
「うん。カッコイイ」
ボーダー君は笑う。
「くれる?」
嬉しくて、つい『うん』と言いそうだった。
「駄目です」
「やっぱり?」
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