第1話

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――彼女は一体…そんな事より、何時の間にあそこに…? 驚愕の目を向ける僕に気付いた少女は、静かに此方を振り向いた。 そして――… 「――綺麗だね…」 小さな鈴の音のような声色で、そう話し掛けられた。 「――…美しいのに…儚いね…」 少女はどこか寂しそうに空を見上げて言った。その姿を見ていると、もっと彼女の事が知りたくなり、その声をもっと聴きたくなった。 「……そうだね」 短く返した僕の方へ顔を向けると、少女はにこっと笑った。 「――っ!」 ハッと息を呑む僕にゆっくりと近付く少女から、僕は視線を逸らすことができなかった。 その間にも、少女は着々と僕に近付いていた―――……。 「――こんにちは」 再度掛けられた少女の声に、ハッと我に返った僕の喉からは掠れた声が出た。 「――っこん、にちは…」 これが精一杯だった。 そんな僕をただ黙って眺めている少女と目が合った。 「………」 ――…可愛い…。 第一印象がそれ。 僕は上から下まで彼女を見た。 彼女はゆっくりと地に足を着けると、にこやかに笑い、そのさくらんぼみたいにふっくらとした小さな唇を開いた。 「…お兄さん…名前は?」 「…ぇ?…ぁ、り…のん…」 「リノン?…そう。僕は…朱華」 「しゅ…か…?」 「うん」 珍しく吃る僕に、彼女はにこにこ笑っていた。その無邪気な笑顔に、僕は少しずつ冷静になっていく。そんな僕を見て、朱華は小さくほくそ笑んだ。 「…少し…お話しませんか?」 彼女の提案に頷いた。 僕達はその場に腰を下ろし、他愛もない話で盛り上がった。
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