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――彼女は一体…そんな事より、何時の間にあそこに…?
驚愕の目を向ける僕に気付いた少女は、静かに此方を振り向いた。
そして――…
「――綺麗だね…」
小さな鈴の音のような声色で、そう話し掛けられた。
「――…美しいのに…儚いね…」
少女はどこか寂しそうに空を見上げて言った。その姿を見ていると、もっと彼女の事が知りたくなり、その声をもっと聴きたくなった。
「……そうだね」
短く返した僕の方へ顔を向けると、少女はにこっと笑った。
「――っ!」
ハッと息を呑む僕にゆっくりと近付く少女から、僕は視線を逸らすことができなかった。
その間にも、少女は着々と僕に近付いていた―――……。
「――こんにちは」
再度掛けられた少女の声に、ハッと我に返った僕の喉からは掠れた声が出た。
「――っこん、にちは…」
これが精一杯だった。
そんな僕をただ黙って眺めている少女と目が合った。
「………」
――…可愛い…。
第一印象がそれ。
僕は上から下まで彼女を見た。
彼女はゆっくりと地に足を着けると、にこやかに笑い、そのさくらんぼみたいにふっくらとした小さな唇を開いた。
「…お兄さん…名前は?」
「…ぇ?…ぁ、り…のん…」
「リノン?…そう。僕は…朱華」
「しゅ…か…?」
「うん」
珍しく吃る僕に、彼女はにこにこ笑っていた。その無邪気な笑顔に、僕は少しずつ冷静になっていく。そんな僕を見て、朱華は小さくほくそ笑んだ。
「…少し…お話しませんか?」
彼女の提案に頷いた。
僕達はその場に腰を下ろし、他愛もない話で盛り上がった。
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