第1話

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「リノンもお散歩?」 そう彼女に問われ、小さく頷いて答えた。 「そうなんだー。僕もね、お散歩中だったんだよ!」 ニッコリと微笑まれ、自然と此方も笑顔になる。 「いつも此処に来るのかい?」 「まさか!今日は偶々だよ?…ほんと…偶々なんだ…」 「?どうかしたのかい?」 急に暗い表情を見せる朱華に、何と無しに訊いてみた。すると朱華は、ぱっと明るく笑い出す。 「――っ!何でもないよ!!そんな事より、リノンは何処から来たの?」 何かを隠している…、そう感じた。 職業柄、こういうちょっとした変化から気付いてしまう。 しかし、それ以上この話題には触れない事にした。 「…ん?僕は、この森を西に進んだ先の街から来たんだ」 「西?…ぇ?」 途端に驚く朱華。 「?何?」 「あそこって…。スッゴいお金持ちの人が住んでるんでしょっ?!」 「う~ん…まぁ、そうだね。結構いるね。それがどうかしたの??」 「…どうかしたって…;じゃあ、リノンもお金持ち?もしかして…貴族階級??」 「うん?まぁ…そうだね。でもそんなのはどうだっていいよ。朱華はさ、何か好きな食べ物とかないの?」 「ふぇ?」 「ふふ…。だからね、朱華の好きな食べ物だよ」 「う~~ん…」 朱華は僕の出身を知り、吃驚していたけど、直ぐに僕が話題を変えたからそれ以上、僕の事を訊く事はなかった。
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