0人が本棚に入れています
本棚に追加
「リノンもお散歩?」
そう彼女に問われ、小さく頷いて答えた。
「そうなんだー。僕もね、お散歩中だったんだよ!」
ニッコリと微笑まれ、自然と此方も笑顔になる。
「いつも此処に来るのかい?」
「まさか!今日は偶々だよ?…ほんと…偶々なんだ…」
「?どうかしたのかい?」
急に暗い表情を見せる朱華に、何と無しに訊いてみた。すると朱華は、ぱっと明るく笑い出す。
「――っ!何でもないよ!!そんな事より、リノンは何処から来たの?」
何かを隠している…、そう感じた。
職業柄、こういうちょっとした変化から気付いてしまう。
しかし、それ以上この話題には触れない事にした。
「…ん?僕は、この森を西に進んだ先の街から来たんだ」
「西?…ぇ?」
途端に驚く朱華。
「?何?」
「あそこって…。スッゴいお金持ちの人が住んでるんでしょっ?!」
「う~ん…まぁ、そうだね。結構いるね。それがどうかしたの??」
「…どうかしたって…;じゃあ、リノンもお金持ち?もしかして…貴族階級??」
「うん?まぁ…そうだね。でもそんなのはどうだっていいよ。朱華はさ、何か好きな食べ物とかないの?」
「ふぇ?」
「ふふ…。だからね、朱華の好きな食べ物だよ」
「う~~ん…」
朱華は僕の出身を知り、吃驚していたけど、直ぐに僕が話題を変えたからそれ以上、僕の事を訊く事はなかった。
最初のコメントを投稿しよう!