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「ひでっ。なんだよ。それ! 俺たち付き合うって――」
『だまって』という鋭さを含ませた声を聞きながら、私は彼女らを無視するようにして本を拾い集めた。先ほどよりもそれが重く感じるのは気のせいだろうか。
どうしてか、自身が酷く情けなくて惨めに思えた。なんだか泣きそうだ。だけれどそんな所ここでは見せたくなかった。――心配させたくないのもある。だけどよれよりも何かに負けてしまう気がしたのだ。その何かは分からないけれど、負けたくなど無かった。
私は顔を上げて見せる。
「いいよ。大丈夫。――ごめんね。邪魔して……一之宮。晃子はとてもいい子だよ? 泣かせないで」
軽く笑いかけると彼は少し照れたように『おう』とだけ返した。悪い人ではないことは知っている。彼は晃子を傷つけたりしないだろう。
ただ晃子は不安そうに私を見ていたけれど。
なんだかひどく疲れていた。頭痛がする様な気がして私は米神を少し抑えていた。それはほとんど無意識のうちに。
「千里」
心配するように晃子は言う。
「大丈夫だって。ほんと。驚いただけだから。大丈夫」
ほとんどそれは自分に言い聞かせていたのかもしれない。
自分でも分かる。どこか歪にニコリと微笑むと私は大荷物を持ちながら踵を返していた。彼女たちを見ないようにして歩き出していた。
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