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「? ――いらないんじゃ」
分からなくてパチパチと目を瞬かせた。
もしかして遊ばれているのではないだろろうか。そう思ってしまう。何故なら芹は確かに笑っているのだが、私には芹が嬉しそうには見えなかったからだ。
それはどこか含みのあるようにも見えた。
「いらないなんて言ってません。いただきます――ありがとうございます。千里様」
なんだか棒読みのような気がするのは勘ぐり過ぎだろうか。
「無理はしなくても――」
苛立たしく感じて私が奪おうとすると芹はひらりと避けた。悔しくなって思わず睨んでしまうが彼は相変わらずの笑顔のままブレスレットを手で弄んだ。
「無理はしていないし、本当に嬉しいんですよ。私――千里様が私の為に一生懸命選んでくださったのでしょ?」
「――う。うん。まぁ? 一生懸命ではないけど」
そう言われるとなんだか照れてしまう。私は彼から目線を外すとポリポリと痒くも無い頬を照れ隠しの様に掻いた。
「礼など瑠璃様から返しきれないほどいただいています。だからお礼ではなく贈り物として受け取りますね」
意味が分からない。どう違うのだろうか。
クスクスと笑う青年に首を捻った。しかしながら。まぁ、もらってくれるのであれば、迷惑と彼が思わないのであればいいのかとも思う。
ただ『瑠璃』という存在が少し気になっただけで。
――確か芹が好きな人だ。
なんだろう。靄の様に心に引っかかるものが私には分からない。とにかく考え無いように顔を上げた。
「では。今度は私の番ですね――何が良いです?」
覗き込まれて私は思わずたじろいでいた。わざとではないのだろうか。と思う程に近い。顔が先ほどまで以上に赤くなるのを感じて思わず隠すようにして顔を反らした。
心臓が自身でも驚くほど波打っている。
「い、いいよ。いいから、十分もらってるし。いろいろ迷惑かけているような気がするし」
『それは義務ですから』言いながら芹は少し考えるように宙に目を移す。何となく助かった気がして私は思わず息を付いてしまっていた。
「ああ。では今度また『ドーナツ』を食べに行きましょう。晃子様も誘って」
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