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暫く何やら考え込んでいたが、彼はパンと軽く嬉しそうに手を合わせた。どうやら甘みが好きらしい。ケーキやドーナツ。先ほどまでとは比べ物にならないほど目が輝いている。なんだかそれは少年の様に見えて可愛らしく思えた。外見はどう見ても大人なのにそのギャップがさらにそれを際立たせている。
――やっぱり『そっち』にすればよかったと私は苦笑を浮かべる。クッキーなら日持ちもある程度はするだろうから。
やっぱり喜ばれないものをあげても意味はないのだ。私は小さく自嘲するかのように口許を歪めていた。
「うん――そうだね。けど芹は『お金』持っているの?」
見たところ持っていなさそうだけれど――というかそんなもの必要なさそうだ。人の生活とはどう見ても無縁に見えた。
「葉っぱをお金に変える技術ならありますが。あと、混乱させて払ったと思わせるとか」
やっぱり。私は思わず肩を落としていた。なんだろう、それ。昔アニメか何かで見たことがある気がする。
私は頭を抱えるように額に手を当てた。
「あのね」
芹はなんだか自慢気に見えたが、そんな技術自慢されても迷惑だし困る。おまけにばれたら大変なことになるのは目に見えていた。――特に前半葉っぱがどうのこうのと言うくだりだ。この歳で刑務所とは仲良くなりたくはない。
とにかくにこりと私は笑顔を浮かべていた。
「だめ、絶対」
低く言うと彼は大きな目を丸くし不思議そうに『どうしてでしょうか?』と答えていた。
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