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もう笑うしかないだろう。
おかげで私は未だこの学校で友達一人もできないでいた。もう二年生の二学期だと言うのに。それに反比例するように『ファンクラブ』と言う存在はなぜか本人非公認であるにも関わらず大きくなっているようだった。
そんな私の葛藤に彼女らが気付くはずなど到底無いだろう。彼女らは満面の笑みを浮かべながら私の前に立つと大きなお弁当袋をそれぞれ差し出した。
「……今日もありがとね」
いつもいつも。ご丁寧に。と思うがその笑顔はどうしても引き攣ってしまう。いつもの事だが気付いてはいないだろう。彼女達には私の『何』も見えていない気がする。
――私は普通の女子でしかない。平均よりちょっと身長が高いだけで。食事の量は何ら変わらないし体重も気にかけている。だから食べきれるはずも無く、最近の夕食はこのお弁当を囲んで夕食が当たり前になってきていた。
少なくとも母は喜んでいたけれど、父と妹はそろそろげんなりしていただろうか。
「でも、いつも作ってこなくても。大変だし」
微かに震える声を『感激』ととらえたらしい少女は胸元で握りこぶしを作った。私としては少しでも空気を読んで欲しかったのだが、読む気などさらさらないらしい。
「大丈夫です! 先輩の力になれるなんて嬉しいです――昨日のお弁当はおいしかったですか?」
昨日の分の空箱を返しながら私は曖昧な返事を返した。残念ながらこの少女が作ったものなど、どれだったか覚えていない。だがそれを『おいしかった』と勝手に判断したのだろう。彼女は嬉しそうに顔を輝かせた。他の子たちも『良かったね』と讃えているがなんだか殺伐としているのは気のせいだろうか。
「とにかく、ありがとう」
不穏な空気を打ち消すように私は声を明るくして見せる。
「はいっ、今度は美羽の感想も言ってくださいね」
そう言うとおそらく自分たちの食事があるのだろう。そんなに昼休みが長いと言うわけでもないのだ。彼女らは屋上を慌ただしく去って行ってしまった。嬉しそうに甲高い声をそれぞれ上げながら。
別にここで食べてもいいのに。そう考えるが何やらそうもいかないらしい。一抹の淋しさが残る。
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