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 日が暮れかけていた。 やはり秋ともなると日が沈むのは早い気がする。東の空は深い藍色に染まり始め、薄く三日月が輝いていた。 綺麗な月だ。私は満月より三日月の方が好きかもなのだと思う。なぜかと言われれば理由なんて無いけれど。そんな事を考えながら私は手に持っていた荷物を抱え直した。  何とか図書館で必死に課題をやりぬいた――というよりは資料をかき集めただけだが――私は大荷物で家路についていた。お弁当と本とそしていつもの通学カバン。明日には筋肉通になりそうな勢いだがそうも言っていられない。落とすと成績に響くことは分かり切っていた。  電車では見て見ぬふりをされ、よく見知った近所のおばさんには『何かあった?』と心配されて。それでも何とか家の近く、路地までたどり着いた。 「ううっ。おもい」  泣き言一つ。だが当然誰も励ましてくれるものはいない。もうすこし。頑張れと自分を励まして私はふらふらとした足取りで歩いていた。  だから事故だったのだ。前を向いていなかった分けではない。思わず曲がり角で軽く誰かと接触してしまった。 「あっ!」 そんなに勢いがあったわけでもないのに、もともと危うい持ち方をしていた為かばらばらと私の手から零れ落ちていく本。何とかお弁当は死守しようとしたがその代りに私の身体が倒れた。  結局お弁当が反転しているが中身は出ていない。それを確認すると安心したように息を付いた。 「すいません」  聞き覚えのあるどこか透明感を含んだ声に私は顔を上げていた。 「あ、晃子」  そこには黒い髪をサラサラと流した少女が立っていた。切れ長の両眼。白い肌。小さな唇。整った顔立ちはどこかそう日本人形とよく似ている。  学校の帰りなのだろう。黒いセーラー服に白いタイがよく映えていた。 「へ? ――千里?」  何を驚いているのだろうか。と私は思ったがすぐに私は理解する。横には少年が立っていたのだ。こちらも見覚えのある……と考えて『ああ』声に思わず出していた。少し大人っぽくはなっているが『一之宮 翔』だ。確か晃子と同じ高校にいたと聞いたけれど。
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