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執事科の生徒にとって主の言葉は絶対的な力を持つ たとえその答えが正しくなかったとしても… ピロリン、という可愛らしい音と共に柳のスマホが揺れる 苛立たしげにスマホを操作する柳の顔はより一層不愉快そうに歪められる そんな様子を気にも止めず画面と自らの主を交互に見て、人知れず溜め息を吐く 画面の中にはこちらを真っ直ぐ見つめ、微笑む青年の姿が映し出されていた 「急用ができた。この件は着いてこなくてもいい」 言い切ると足早に部屋から出ていく柳 そして、塚本の携帯にもメールが一件 “危険因子は早めに摘み取るに限る。君だってわかっているだろう?” 当たり前だろう、玲音は私の主人なんだから… 、その声はメール相手にはもちろん、部屋から退室した柳にも伝わることなく、小さくなった足音と共に周囲に溶けていった ── ─ 玲音side 自分が恵まれた環境にいることはわかってた 本家の息子、かつ後継者候補内で一際高い学力 正統後継者 僕は幸せになるべく生まれてきたんだ、と真実を知るまでは、そう…思ってた ──僕は父上の愛人、妾の子
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