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だから、…いつも他者から一線引いて接している惣次郎がどんな事を思っているかなんて、…考えていられなかった ── ─ 花村惣次郎(わんこ書記)side 昔は何でも話してたのに… オレたちは大人であることを要求された、子供なんだ 一人前には程遠いけど、より大人らしく振る舞う必要があった 透はそれが上手だった、ずっと昔から 出会った当初は弱さを全く見せない、良く言えば完璧、悪く言えば人間らしくないような人だった でも、時間が経つにつれて、透の内面は真逆だって気づいた 外面には出さなくても、浮き沈みが激しく、些細なことも気になるような人だった そんなところが死んだ母さんによく似てた 最期の最後までオレを優しく見つめ、微笑んでいた母さんは消えそうだった だからかな、守ってあげたいって思うのは… 母さんが死んでからは生きてるのに、生きてる心地がしなかった 誰もオレを見ないで無視する 誰から存在を認められない、 誰にも“必要とされない” オレを置いていかないで、“独り”にしないで、独りはすごく───寂しくて、辛い
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