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蛇に睨まれた蛙のように体をビクリと震わせて動けなくなった二人がほぼ同時に謝罪の言葉を口にすると、スーフェルから滲み出していた何かは一瞬にして身を潜めた。
それどころか突然花が幾つも飛んでいそうな笑みを見せたスーフェルは、二人を手招きして近くに呼び寄せた。
「やっぱり、君達はイイコだね?
クェルの言いたいことも分かるし、僕も正直そう思ってる。
オーブはもう少し自分の意思を持つべきだじゃないかい?
……でもまあ、クェルは人前では少し黙っていた方がいいよ。
それを陛下ではない他の輩に聞かれたら、間違いなく周りから睨まれるよ?
オーブの言い方は、そういうことを考えればいい回答例だけど。
……って二人とも、そんなに暗い顔をしない!
こんなところにずっといたらマキ様が凍えちゃうよ?
だからさ、早く僕らの城に帰ろうか。陛下たちが到着を待っているはずだよ?
……というわけで、オーブ。マキ様を運ぶのはよろしくね?
今の僕のこの体格じゃ、さすがに支えるので精一杯だからさ。
クェルは、城へ帰る準備をしてくれる?」
にこやかにスーフェルが告げると二人は声には出すことなく静かに頷き、オーブはまきをスーフェルの体から引き剥がして優しく横抱きし、クェルはスーフェルとオーブの肩に触れた。
その瞬間、視界を白く染め上げる風が四人を囲むように吹いて四人の姿を完全に消すと、不思議なことにその一瞬で白い風はその風に包まれたはずの四人を足跡だけ残して消し去っていた。
その場に四人が確かにいた証となる足跡も、その次に押し寄せてきた多くの雪を含んだ白い風によって綺麗に消し去られ、何もかもあっという間に白に染め上げられてしまった。
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