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「……そ。僕らの女王陛下って『まき』のことさ。
君達はそちらに行った後のことは知っているだろうけど、それ以前のことに関しては全くと言っていいくらい知らない。
逆に僕らは以前のまき様のことは知っているけど、そちらに行った後のことに関してはほとんど知らないんだ。
だからさ、交換しようよ。
君が僕らにまき様のそちらでの様子を教えてくれるなら、僕らも以前の様子を教えてあげる。どう?
……決まりだね。じゃあ、こっちに来なよ。
……別に取って食うわけでもないんだから、ほら座りなって!
……じゃあ、目をつぶって。それじゃあ、いくよ」
スーフェルが言い終えると同時に、今まで部屋を照らしていた窓からの光が暗幕に遮られたかのようにすべて消え、部屋の中は一寸先も見えぬ闇の中に消えた。
「慌てなくても大丈夫。君には少しだけ夢を見てもらうだけ。
というか僕の声、聞こえてるよねー?
……よかった。これから見せるのは、僕らが城の外で育てられていたまき様を迎えに行く所。
とにかく周りにびっくりして暴れないでね、見れなくなるから。
……なんで城の外で育てられてたとか、どういうことか説明してから教えろだって?君は注文が多いねぇ……というか多すぎだよ!
今回は特別に教えてあげるけど、次回からは教えてあげないからよく聞いて。
先代の女王陛下が僕達に隠れてまき様を産んで、自分とは同じ運命を辿らせたくないとかっていう理由で孤児院に預けたの。
僕らに隠したって、時間さえあればわかってしまうことくらい知ってるのにね。……どういうこと?ってしつこいよ!
それはまた別の時に教えてあげるから、さっさと見てこい!」
その言葉がきっかけだったようで、先ほどまでの心地よい気温が一転し、巨大な冷凍庫の中のような鋭い寒さが襲いかかってきた。
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