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突然視界が開けたかと思うと、そこはもうすでに部屋の中ですらなかった。
優しく温かい太陽の光は灰色の分厚い雲にさえぎられ、一面真っ白な大地を強い風が降り積もった雪を巻き上げながら走り去っていく。
地吹雪の中、明らかにこんな日に外を出歩くには適さない軽装で歩く小さな人影を見つけた。
白い雪の中では目立つ水色の髪は風に踊らされ、膝まで雪に埋もれながら歩いてきた道筋は徐々に雪と風によって見えなくなっていく。
遮るものがないこの場所を歩くその人影に近づいていくと、顔立ちは幼く顔や髪に汚れやごみが付いているがまき本人のようだ。
どこに向かっているかはわからないが、どこかに行きたいという目的がって歩いているようには見えない乱暴な足取りで進んでいくと、吹きすさぶ風の音に混じってクスクスという複数の笑い声がどこからか聞こえてきた。
『ミツケタ……』
その言葉と同時に雪を多く含んだ強い風が視界を白に塗り替え、その風が過ぎ去るとまきの進行方向を塞ぐように三人の人影が立っていた。
そのうちの一人は先ほど本で埋め尽くされた部屋で会ったスーフェルのようだが、両隣の二人は全く見覚えがなかった。
薄青紫の毛皮でできた帽子を被ったスーフェルの左に立っている人物は左目を前髪で隠した女性のように見え、右側に立っている人物はこんな吹雪の中に立っているには似つかない正装に身を包んだ長身の男だった。
一方、幼いまきは突然現れた三人組を見上げたままその場に立ち尽くしていた。
「この子がそうなの?スーフェル」
「うん、間違いないよ。君もそう思うだろ、オーブ」
「何故、こんなに汚れているのだ?」
「ついでにこんなとこを歩いてるなんて、ね。まあ、手間が省けたともいうのかしら?」
目の前にいるはずのまきをそっちのけで話し出した三人組。
手間が省けたってどういうことなのか、と新たな疑問が頭に浮かんだがその答えはすぐにこの三人が行動で示してくれた。
「オーブ、クェル。君達は、少し黙ってくれるかい?
……お見苦しいところを見せてしまい申し訳ありません。
我々はあなたをお迎えにまいりました。安心してください、マキ・ウィンファルド姫様」
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