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スーフェルは仰々しく雪が積もった地面に膝を付いて頭を下げ、恭しく顔を上げると深々と被ったフードと視線を遮るように長く伸ばされた前髪から唯一まともに見える口の両端を上げていた。
その前に立ち尽くしていたまきは、自分に対してスーフェルが膝を付いて頭を下げたことが信じられないと言わんばかりに表情を強張らせている。
スーフェルの横に立っていた二人も静かに膝を折って頭を下げると、まきは目の前の現実を否定するかのように後ろに下がりながら首をゆっくり横に振るが、これは紛れもない現実であることを証明するかのように三人は相変わらずその場にいた。
本能的に自分の身に迫る危険のようなものを感じたまきは踵を返し、涙目になって慌てて走り出したがすぐに雪に足を取られて体ごと雪の中に突っ込んでいったがその前にオーブが先回りし、優しくその体を受け止めていた。
「大丈夫ですか、マキ様。お怪我などはありませんか?」
オーブの腕の中で目をきつく閉じていたまきはその言葉を聞いて恐る恐る目を開けたが、声をかけた男(オーブ)は先ほど自分に対して頭を下げた三人の一人。
そんな男の腕の中にいることを認識したまきの顔からは音が出る勢いで血の気が引いていった。
「い、いやああああ!離して、離してよ……!」
まるで恐ろしいものを見たかのような表情をしているまきが、今にも暴れだしそうな音量で叫ぶとオーブは何も言わずにまきを地面に下ろして離れた。
体を小さくして震えていたまきだったが、先ほど突っ込みそうになったところを助けたオーブを含めた三人は話しかけるどころか何もしてこない。
まきが瞳に警戒心と恐怖を宿しながらも三人を見ると、少し離れたところで三人は微笑みながら全く微動だせずに立っていた。
まきがゆっくりとした足並みで近づいて来ても、まきが三人の目の前に立っても、三人は全く変わった様子はなく微笑んでいた。
「んで。……何で、私を離してくれたの?」
俯いたまきが風で掻き消えそうなほど小さな声で呟くとオーブは目線を合わせるためにしゃがみ、微笑を絶やすことなくまきの顔を覗き込むように顔を傾げた。
「それは、マキ様からご命令でしたので。先ほどは出すぎたまねをしてしまい、申し訳ありませんでした」
「そんなんじゃない。何で、何で私なんかを助けたの?
私はみんなとは違うバケモノなのに!」
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