第1話

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「… お前…」 「…リク君、あたしねっ…」 リクはがばっと、少女を腕に包み込んだ。 花のようにほんのり香る髪と、すっぽりおさまる小さな体。 「リク君…!」 「…本物…なんだよな…?!」 リクはドキドキしながら、やっとそれを問う。 「そうだよ、あたしだよ、リク君」 色々な思いが、体の各地からこみあげてくる。 泣きたいくらいに、嬉しかった。 「リク君、あのね」 リクはそっと少女を離すと、そのまま床に腰かけた。 「あたしね、人間になったの。 リク君に会いたくて…どうしても会いたくて」 少女の目が、きらきらした視線を送る。 リクはその光を、真っ直ぐに受けた。 「…あぁ。すげーじゃん」 「桜の大精霊様にね、あたしお願いしたの。 それで、叶えてくれたんだよ。 リク君、夢みたいだよ。あたし、もう一度戻って来れたの…!」 「…あぁ。すげーじゃん」 リクは繰り返した。 「これから、ずっと一緒にいれるんだよな?」 「…えっと…」 少女は少しうつむいた。 「えっとね、ただで人間になったわけじゃあないの。 桜の大精霊様はね、こう言ったの。 ”お前の桜は本当に可愛らしく咲き、美しかった。 草花も平気で踏みつぶすような人間になれば、お前の美しさは消えてなくなる。 人間になって、お前が桜よりも美しい姿を見せてくれ。 そうしたら、その姿はお前のものだ。一生” …って」 「…つまり、どういうこと?」 「人間のあたしが、桜の時よりも美しい姿を、大精霊様にお見せするの。 そうできた時、あたし本当に人間になれるんだ」 リクはよくわからないまま、頷いた。 「…そっか。よくわかんねーけど、大丈夫だよな?」 「…うん。あたし、頑張るね。まずはしばらく、人間の世界を見てみる。 それから、考えてみる。 来年の、一番最初の桜が咲くまでに…」
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