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「…いいけど、あたしサイズMだけど、春野木さんにはでかいんじゃない?」
「いーからいーから、とりあえず貸してやってよ」
「…はい。じゃ、長袖と半ズボンね。
さすがに長袖長ズボンは、この時期きもいっしょ」
鳩美は紺色のジャージを、桜の机にポイッと置いた。
「ありがとう、とっても優しいのね!!」
桜はジャージを握ると、相変わらずまっすぐな言葉を鳩美に投げかけた。
鳩美は、一瞬驚いたようだったが、「そう?」と一言答え、ジャージに着替えだした。
「リクくん、見てみて!ジャージを借りたの!」
桜はだぼだぼしたジャージの袖を突き出して、リクに嬉しそうに見せに来た。
「おー、良かったじゃん。…つーか、なんかお前、ジャージ似合わねー」
リクはゲラゲラ笑った。
体育館に着くと、遅刻した昌秋も追いついた。
「お前、体育の時はちゃんときやがって」
春樹がすかさず、とび蹴りを食らわしに行った。
「いや、だって今バスケだし。
…で、あの子ダレ?」
淡々としている昌秋は、春樹の蹴りを両手で止めると、リクの隣にいる桜に目をとめた。
「転校生。リクの知り合いなんだってさ」
「ふーん。なんか、見たことあるようなないような」
「そーか?」
実は、桜と春樹と昌秋は、一度会っている。
しかしそれも1年半前の話だし、お互いに思い出しはしなかったのだが。
「鐘鳴ったぞ、並べー!」
いつものジャージ姿に戻った和田が、ホイッスルとバスケットボール片手に
大声を張り上げた。
名前の順、しかも男女別にならぶ制度がわからず、男子に混じってリクの横にならぼうとした桜を、鳩美が呼び戻してくれた。
「あたしの、後ろだから」
「そうなんだ!嬉しい、よろしくね」
素直な桜に、鳩美も少したじたじになる。
「…あー、うん」
「じゃーまず体操から始めるぞー
ひろがれー
イッチ、二―、サーン…シッ!」
桜は、見よう見まねで体を動かした。
「声だせ、声ー!!」
桜は、バスケなどやったことはない。
ボールに触れたことすらない。
体操の後は鳩美を捕まえると、バスケについて教えてもらうことにした。
鳩美は面倒くさそうな顔をしつつ、丁寧に教えてくれた。
「鳩美、ありがとな。こいつのこと、頼むわ」
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