第1話

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「…いいけど、あたしサイズMだけど、春野木さんにはでかいんじゃない?」 「いーからいーから、とりあえず貸してやってよ」 「…はい。じゃ、長袖と半ズボンね。 さすがに長袖長ズボンは、この時期きもいっしょ」 鳩美は紺色のジャージを、桜の机にポイッと置いた。 「ありがとう、とっても優しいのね!!」 桜はジャージを握ると、相変わらずまっすぐな言葉を鳩美に投げかけた。 鳩美は、一瞬驚いたようだったが、「そう?」と一言答え、ジャージに着替えだした。 「リクくん、見てみて!ジャージを借りたの!」 桜はだぼだぼしたジャージの袖を突き出して、リクに嬉しそうに見せに来た。 「おー、良かったじゃん。…つーか、なんかお前、ジャージ似合わねー」 リクはゲラゲラ笑った。 体育館に着くと、遅刻した昌秋も追いついた。 「お前、体育の時はちゃんときやがって」 春樹がすかさず、とび蹴りを食らわしに行った。 「いや、だって今バスケだし。 …で、あの子ダレ?」 淡々としている昌秋は、春樹の蹴りを両手で止めると、リクの隣にいる桜に目をとめた。 「転校生。リクの知り合いなんだってさ」 「ふーん。なんか、見たことあるようなないような」 「そーか?」 実は、桜と春樹と昌秋は、一度会っている。 しかしそれも1年半前の話だし、お互いに思い出しはしなかったのだが。 「鐘鳴ったぞ、並べー!」 いつものジャージ姿に戻った和田が、ホイッスルとバスケットボール片手に 大声を張り上げた。 名前の順、しかも男女別にならぶ制度がわからず、男子に混じってリクの横にならぼうとした桜を、鳩美が呼び戻してくれた。 「あたしの、後ろだから」 「そうなんだ!嬉しい、よろしくね」 素直な桜に、鳩美も少したじたじになる。 「…あー、うん」 「じゃーまず体操から始めるぞー ひろがれー イッチ、二―、サーン…シッ!」 桜は、見よう見まねで体を動かした。 「声だせ、声ー!!」 桜は、バスケなどやったことはない。 ボールに触れたことすらない。 体操の後は鳩美を捕まえると、バスケについて教えてもらうことにした。 鳩美は面倒くさそうな顔をしつつ、丁寧に教えてくれた。 「鳩美、ありがとな。こいつのこと、頼むわ」
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