第1話

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…………落ち着け 盗られたのは財布だけだ…… 鞄はある 省吾さんに電話をしなきゃ 金がなきゃ、この病院の支払いも出来ない 「あの……公衆電話は?」 ……………?! 聞いてから、金が1円も無いことに気づき青くなる さっきの男じゃないが、本気で見知らぬ人から金を借りなきゃならない状況に不安を覚える 「廊下の突き当たりですよ あ……井澤さん……先程の女性から預かり物です」 渡されたのは、封筒 開けると、中から2万円……と10円玉が20枚 『現金がないと、お困りでしょう 少ないとは思いますが、お使い下さい』 綺麗な字……… さっきの正義感溢れる女性とは思えない繊細な文字 少なくないよ ……俺、なにやってんだよ お礼を言って帰してしまった 彼女は……名乗ることもなく、見ず知らずの男に金を置いて消えていった しかも2万だ…… 「あの……この女性は……」 「1度、帰られたのですが、小銭が必要だろうと、両替されて再び戻られて……今さっきですよ?」 「すぐ戻ります!」 階段をかけ下りる お礼を言わなきゃ お金だって返さないわけにはいかない きちんと連絡先を聞かないと…… さっきまで意識がなかったのに、すごいパワーだ…… エレベーターを見に行くが、すでに上に向かってる もう、外に出ちゃったかな? 自動ドアで外から入ってきた人とぶつかった 「わ……失礼しました!」 慌てて謝ると……… 「崇……大丈夫か?!」 あっ……省吾さん!! 半べそで抱きついてしまいそうになる
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