第8章 もしもつけられていたら

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明かりを消してしばらくたった頃 烝さんが寝ると布団から起き上がり、いつものように縁側へ座り月を眺めていた 先ほどは月が出ていたのだがいつの間にか隠されてしまったらしい 今日は少し雲がかかっている 「寝られないんですか?」 こちらに近づいてくるようなので振り向いた私に、その人は小さく問いかけた 「すみません、起こしてしまいましたね。」 「いえ、大丈夫ですよ。」 烝さんは返事をすると私の隣に腰掛けた 再び顔を出した月明かりだけが私たちを照らし出す 「綺麗ですね。」 隣にいる烝さんが月を見上げて不意につぶやく 振り返って見てみればその人はわずかに微笑みながら真上に上がった月を見上げていた 「そうですね。」 綺麗……ですか。 考えた事ありませんでした。 そんな風に思いながらもとりあえず話を合わせることにした ただなんとなく夜空を見つめていた私には考えたこともなかったことだ 一人物思いにふけっていると再び月が雲に隠れた それと同時に烝さんから質問がくる 「雛はいつも寝ていないんですか? 俺は雛が寝ているところを見たことありません。」 「まあ、そうですね。 基本眠れないんですよ、私は。」 そばに人がいると眠れない、なんて絶対に言えません。 追い出されます…住む場所失います……! 「じゃあ、どうして隈はできないんですか?」 漸くこちらを向いた烝さんから出た言葉には少々驚いた
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