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私にとって人の前で気を失うなど言語道断、あってはいけないことだ
それも見知らぬ人の前でなどもってのほか
一人反省をしながらも話をつづけた
「記憶がないんですから主もわかりません。」
もちろん主の行方が、などとは言わなかったが
実は主のことは覚えていたりする
まあもう会えることはないだろうから言う必要もない
仮に言ったところでどうなるわけでもないし、言えば今以上に怪しまれるだけ
言っても私にはなんの益もないから口に出すのはやめておく
「歳、もういいだろう?
あまり人を疑ってかかるものではないよ。」
「はぁ……ったく、わあったよ。とりあえず今日はもういい。」
近藤局長のお叱りの言葉でついに土方副長が引いた
さすが局長だ
……土方副長は眉間にシワを寄せているが
「疲れただろう、今日はゆっくり休むんだよ。」
「明日からはまた普通通り働いてもらうからな。」
山南副長が言った後すぐに土方副長が続けるので二人とも苦笑いをしている
なんともおかしな光景だ
「ありがとうございます。
それでは、失礼します。」
目の前の三人に一礼をしてから部屋を出る
廊下に出るとすでに真っ暗になっていた
所々の部屋から漏れる少量の明かりが一言で言うと……不気味
昼間の屯所からは想像もつかないほどの静けさの中、月明かりだけを頼りに部屋へ戻った
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