第1章 始まりと出会い

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「なかなか見つかりませんね」 「……うん」  とりあえず市中を回ることにした私たちは、適当に歩いていた。 「すみません、この子の母親を探してるんですけど……」  何軒か店に入って尋ねてみるが、誰に話しかけても首を振られるばかり。  私が再び歩き出そうと一歩踏み出すと、不意に繋いだ手に力が入った。  視線を下ろすと、男の子は俯いていて顔が見えなかった。 「どうしましたか?」 「お姉ちゃん、疲れた」  男の子の顔色を覗くと確かに疲れが見える。 「少し、休みましょうか」  頷く男の子の手を引き、近くの河原に腰を下ろす。  私がぼうっと川を眺めていると、少しして、ポスっと男の子が私に寄りかかってきた。  隣を見ると、その子は目を閉じて、すうすうと寝息を立てている。 「……寝ちゃったんですか?」  小さく問いかけるが、答えは返ってこない。  よほど疲れていたようで、気持ち良さそうに寝ている。 「……困りましたね」  空を見上げると日が落ちかけていた。  仕方が無いと私も体を倒せば段々と瞼が重たくなってきた。 「少し、だけ……」  恐ろしいくらい素直な男の子の存在に、少なからず気を許していたらしい。  私はそのまま目を閉じた。 「お姉ちゃん……」  遠くなる意識の中、男の子の呟き声が聞こえた。  心細いはずの男の子が私についてきてくれる。  私にこの子のお母さんを見つけることはできるのだろうか。
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