第10章 歓迎会という名の宴

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「雛ちゃんさ。」 ふいにつぶやかれた声に耳を傾ける。 「はい。」 「疑われてるの、なんとなく雰囲気でわかってんだろ?」 「はい、そうですね。」 「いやじゃねぇの?」 「仕方ないですよ。 みなさんもまだここに来たばかりなんでしょう? いろいろ不安なこともあるでしょうし。」 「それはそうだけど…。」 「そんなときに身元もなにもわからない女がくればこの対応が当たり前です。」 「……雛ちゃんは強いな。」 「強くないですよ、きっと誰よりも弱い。 私はもっと強くなりたいです。」 私は誰よりも強くありたい。 そんなこと、叶わないことはわかっているのに。 「強いよ、雛ちゃんは。 少なくとも俺よりはさ。 俺は疑われてるのにそこに居続けることなんてできねぇよ。」 普通はそんなものなのでしょうか。 「ふふ、藤堂さんも私と同じ生き方をしていればそうなりますよ。」 「同じ生き方?」 「はい。 人は生き方で在り方も変わるでしょう? そういうことですよ。」 「難しいなぁ。 俺にはわかんねぇ。」 「藤堂さんはわかっていますよ。 ただ言動に表せないだけで。」 「そうなのかなぁ。」 きっとそう。 誰だってそういうものだろう。 考えなくてもわかっているから、考えようとはしない。 世の中はそういう無意識の中で起こる言動によって動かされている。 私にはそう思えてならない。 しばらく話をしていると、ようやく屯所が見えてきた。
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